占有者の遵守義務とは!?

近年、分譲マンションでは外部区分所有者による
賃貸経営といった所有形態が増えてきました。

また、親がそこには居住せず、
外部区分所有者のままで子が居住するといった
使用貸借を行いながら区分所有するといったなどの様々な所有形態があります。
(使用貸借…無償で占有をさせる契約)

これらの区分所有者から借り受けた者を
法律上では占有者といい、区分所有者と同居している家族も
専有補助者として占有者とされます。

そして賃貸借による専有部分の貸与については、
マンション標準管理規約に規定があり、

区分所有者が、専有部分を第三者に貸与する場合には、
その第三者に対して規約及び使用細則を遵守させる義務や

定められた事項を遵守する旨の誓約書を管理組合に提出させる
といった決まりごとを定めています。

占有者は、区分所有法第46条2項により、建物又はその敷地若しくは附属施設の使用方法につき、区分所有者が規約又は集会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負うこととされています。

遵守義務は「建物等の使用方法」に限定され
区分所有法第6条1項の共同の利益を反する行為である

ペット等の迷惑行為や不当毀損行為、不当外観変更行為といった
有害な行為を区分所有者と同様に禁止される義務が課せられています。

つまり、占有者は、管理組合の構成員ではなく、直接の管理規約の
適用を受けるとは断定できません。

それは、管理費や修繕積立金の管理組合に対する
直接の支払義務がないこともあげられます。

一括検針一括徴収方式による水道料金等の賃借人の支払義務

では、管理組合が一括検針一括徴収している水道料金を
賃借人が滞納した場合に、区分所有者が立替える義務はあるのでしょうか?

管理組合としては、
区分所有法にある先取特権や特定承継人の責任については、
新賃借人には主張できません。

賃借人が退去した場合についての債権の扱いについては
区分所有法には定めがありませんので
区分所有者が責任を負うことにもなるでしょう。

管理組合としては、規約で賃借人の債務について
区分所有者が連帯して責任を負うような誓約書を提出させる必要があります。

賃借人等の占有者は管理組合の役員になれるのか?

総会において占有者が建物等の使用方法などの
利害関係がある直接の問題に対しては、
総会に出席して意見を述べることはできますが、議決権はありません。

賃借人が議決権を持つには、
区分所有者による委任による代理手続き制度があれば可能ですが、

貸与する区分所有者と相反する意見を賃借人が主張するようであれば
管理組合としても問題がありますので注意が必要です。

そして、
賃借人は管理組合の役員になれるのかどうかといった問題があります。

かつて賃借人が理事長として
訴訟手続きを行う場合に原告適格が問題となった事例がありましたが、

そこでは規約上、賃借人は管理者(理事長)となれないとされていたため、
裁判所では受理されませんでした。

法律上では、役員である管理者(理事長)が、
賃借人がなれることを否定してはいません。

第三者管理者方式として管理会社やマンション管理士等などの
外部の者も役員として就任することは、規約上認められていれば可能となります。

しかし、通常の管理規約には
様々な利害関係を調整した結果、

現に組合員のうちから選任するといった規定や
区分所有者の親族の代理出席などを可能とするまでの厳格な規定が一般的でしょう。

賃借人が役員になるにはなり手不足が深刻しているような状況のみ
検討することがよいと思いますし、

実際に検討するには、
合意のための十分な検討を進める必要があります。