滞納問題に対する管理組合の苦悩!!

マンション管理等において管理組合は、管理費や修繕積立金、使用料などを徴収します。

これらは維持管理上においてとても重要となる収入です。

管理費等の滞納が行われると管理状況に問題をもたらすだけでなく、他の区分所有者との間においても不公平感をもたらします。

そこでマンション標準管理規約上でも、別添3等において「滞納管理費等回収のための管理組合による措置に係るフローチャート」を公表し、解決のための解説をしています。

滞納に対する解決としては、自宅訪問、督促状、内容証明郵便といった裁判外の回収や
支払督促等の債務名義による強制執行、競売申立てといった裁判上の回収があります。

強制的に回収する裁判上の手続きには、弁護士費用等の費用問題や長期間に渡っての裁判上の手間が多くかかり、非常に面倒な手続きとなります。

かと言って、裁判外で行われる回収をおこなっても、大きな強制力もなく、長期滞納者に対しての回収も思うような成果は上げられませんでしょう。

そこで裁判外、裁判上の手続き上の検討の狭間に立たされた管理組合において管理費等の滞納者に対して氏名の公表を検討することがあります。

当然に管理組合としては、滞納問題は共同の利益に反する行為と思われ、氏名を公表すれば事実上の強制力があり、有効な対策と考えます。

そこでの問題となるのが公表が、滞納者のプライバシー侵害、名誉毀損になるのではないかという問題があります。

プライバシー侵害,名誉毀損についての裁判所の判断?

裁判所の判断事例によると、マンションではないが、別荘地での団地を構成する紛争において町会の会長が、管理費の督促を行うために立看板を設置し、氏名を公表したことが名誉毀損にあたるのではないかが問題になりました。
(東京地判H11、12、24)

裁判所の判断は、管理費の未納者の立看板による公表について

「やや穏当さを欠くきらいがないではないが~管理費の支払を促す正当な管理行為の範囲を著しく逸脱したものとは」いえないとし、名誉毀損に当たらないとしました。

しかしながら、氏名を公表することにより、プライバシーを侵害し、家族、子供への影響も考えられるため、このことについて配慮不足があると損害賠償請求といった別の問題へ発展する可能性があり、慎重な検討が必要となり、やはり大変難しい決断となることでしょう。

管理費等の滞納は、5年経過で時効となり組合員からその責任について理事に弁済を求めることも認められなくもありません。

差し迫った手段として氏名公表をすることは、上の判決においても無条件に認めているわけでなく、不法行為として認められる可能性もあるので完全に肯定できる対策ではありません。