管理組合の財務会計は、予算準拠主義と言われています。
一般企業での決算報告では、損益計算書があり、売上、経費といった損益を表していますが、管理組合での収支報告は、年度開始前から計画された予算のもと、収入に対して、どのくらいの経費がかかったのかを報告する収支報告書となります。
この予算をもとに決算報告するといったことは、予算準拠主義といいます。
管理費会計では、管理費、使用料等の年間収入となる収入を予算計上し、前年度の実績を参考に、事業計画を作成し、各清掃費、設備点検費等の経費を予算化します。
修繕積立金会計では、収入に対して長期修繕計画に基づく計画修繕費の費用等を予算化します。
管理費会計、修繕積立金会計、それぞれ、予算があって決算となります。
なりますが、この予算、前年度の実績を参考された管理費会計や長期修繕計画に基づくなどの修繕積立金会計ですが、予算の執行の途中で、予期しない支出が必要になることがあります。
管理費会計で言えば、予期せぬ設備故障による更新等や修繕積立金会計で言えば、不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕、予期せぬ大規模修繕工事の実数清算の増加等があげられるでしょう。
そのような場合には、マンション標準管理規約第58条第2項により、「収支予算を変更しようとするときは、理事長は、その予算案を臨時総会に提出し、その承認を得なければならない」とあります。
予期せぬ支出です。
緊急性が高いことも予想ができますので、臨時総会まで開く余裕がないことが想像できます。
その場合に、予算に計上するのが予備費です。
予算に予備費を設定しておくと緊急に支出が必要な場合でも迅速に対応することができます。
この予備費の設定は、予算総額の2~5%の範囲は必要といえるでしょう。
しかしながら、本来予算は、計上したものを支出するのが普通です。
総会で承認された予備費は、臨時総会は必要なく、理事会決議で任意に支出できるものなので、安易に利用しては問題が多いこととなるでしょう。
この予備費は、有用ではあるのでしょうが、支出超過は、禁物といえるでしょう。
あまりにも多くの予備費の計上は、予算の不正不当執行と思われ、責任問題を問われかねません。
先に申し上げた、設備故障の予備費利用があった場合に、実は、当初より異常の兆候があるのにも関わらず、それを理事会が放置したことを指摘され、その後に、極端のことを言えば、不足の予備費の支出が、善管注意義務違反と指摘されても反論はできないなんてことも考えられます。
なお、決算報告につき、区分所有法では、報告(予備費支出の報告も含む)を怠ったり、虚偽(予備費支出の報告も含む)の報告をした管理者(理事長)は、20万円以下の過料に処されるとありますのでご注意を…。