善管注意義務と守秘義務とは
マンション管理において重要とされる義務があります。
それは、善管注意義務と守秘義務です。
これらは法解釈上、とても理解や義務の範囲の判断が難しく、どの程度のものかと悩みます。
この二つを端的に言うと、
善管注意義務…
民法644条「受任者は、委任の本旨に従い善良なる管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負う」
守秘義務…
業務上で知り得た個人情報等の秘密を漏らしてはいけない。正当な理由なく、秘密を漏らせば罰則規定があるのが通常です。
となります。
これらの義務が、マンション管理において扱われる場合とは、どのようなときでしょう。
管理会社と理事等の善管注意義務
マンション標準管理委託契約書の5条には、管理会社への善管注意義務が定められています。
「乙は、善良なる管理者の注意をもって管理事務を行うものとする。」
区分所有者の中から選ばれた管理者(理事長等)は、区分所有法28条により、「この法律及び規約に定めるもののほか、管理者の権利義務は、委任(民法)に関する規定に従う。」とあり、民法644条の善管注意義務を受けることになります。
このように、管理会社だけでなく、理事長等の役員に対しても善管注意義務はあります。
ただし、全面的に信頼を委ねてマンション管理をなす管理会社と輪番により、泣く泣く役員となる組合員との善管注意義務には、解釈に大きな差があります。
当然ですが、管理業者は委託契約内容を履行する義務があり、一般的に専門家として注意を払うことを怠れば、債務不履行となり損害賠償問題となります。
しかし、役員については、このような事例があります。
理事長らが管理費等を流用する管理会社の事実をほぼ、無関心といえる状態のままにしたことについて善管注意義務違反が認められたことがありますが、普段から管理については役員に対して任せっきりという事実に基づき、過失相殺が認められ、責任が軽減された事例があります。
しかし、このように解釈には差がありますが、理事長らはけしておごることなく、注意は必要かとは思いますが。
管理会社と理事等の守秘義務
管理会社はマンション内においての個人情報法を多く所有しています。
区分所有者の連絡先等の組合員名簿や区分所有者の中にいる管理費等の滞納者の氏名です。
これは、管理会社としては当然に知るべき事実です。
そして、委託契約が解除された後でも慎重に扱い、守秘義務を守らなければなりません。
しかし、法律で守秘義務があっても一般的には正当な理由があれば、秘密を開示することが認められます。
この正当理由の開示は、警察署、税務署などからの請求に基づくことが、挙げられますが、一般的に管理費の滞納に関する事項は、理事長や理事が把握しておくべきことですので開示する必要があります。
次に、理事等の守秘義務ですが、民法644条より受任者として民法上の守秘義務を負うことになります。
ですから、理事等として知り得た情報を漏らすことは民法709条の不法行為の問題となり、損害賠償の責任を負うことになります。
管理組合員であれば、誰もが理事等の役員を経験することになりますのでその際には、守秘義務の履行を怠らず、プライバシー侵害や名誉棄損を訴えられないよう注意して頂きたいと思います。