前回は、専有部分について解説しました。

共用部分と専有部分の違いは、管理運営上、費用負担や責任問題などで、とても重要となります。

マンション標準管理規約では、玄関ドアについて、錠及び内部塗装部分を専有部分としていますが、では、ドアクローザーは?

一応の解釈として、錠と内部塗装が専有部分であれば、それ以外であるドアクローザーは共用部分となります。

このような解釈上の基準を規約に定めることにより、そこが専有部分であるか、共用部分であるかの区分をし、無用なトラブルを防ぐこととなります。

専有部分なのか、共用部分なのかを管理規約上曖昧にすると、管理運営上、トラブルとなることは、前回までの解説でも、お分かりいただけると思います。

共用部分について

共用部分には、法定共用部分と規約共用部分があります。

法定共用部分…法律上明らかに共用部分とされる部分
・専有部分以外の建物の部分(廊下、階段、エントランスなど)
・専有部分に属しない建物の附属物(電気,電話配線、給排水,ガス配管など)

規約共用部分…任意的に管理規約で共用部分とされる部分(管理員室、ごみ置き場、集会室など)
・規約変更によって共用部分とすることできるのであれば、その後も規約変更にて専有部分に戻すことができる。

しかし、これだけでは専有部分と共用部分の明確化が難しく、区分所有法上でも争いが多いため、マンション標準管理規約の別表第2で踏み込んだ規定をしています。

特に各種の配線、配管については、給水管は、本管から各住戸メーターを含む部分、雑排水管及び汚水管については、配管継手及び立て管を共用部分と定めています。

排水管については清掃する際には専有部分と共用部分関係なく、一貫して清掃が行われますので、費用負担は管理組合側が一般的(マンション標準管理規約第21条2項参照)だと思いますが、給排水管を取り換えたりしなければいけない場合に、どこまでが、専有部分なのか、共用部分なのか、の曖昧さを解消するためには、別表第2が参考となるでしょう。

ただしそれだけで区分のすみ分けができ、すべてが解決できるかといえば、そうではないでしょう。

例えばこのようなことがあります、古いマンションでは排水管などが下階の天井裏を通っていることが多いです。

床下に配管があれば専有部分と判断が付きますが、この場合は、下階の部屋の天井裏です。

つまりは、スラブ下(コンクリート床みたいなもの)にあるので配管を交換する際の費用負担は管理組合(共用部分)?区分所有者(専有部分)?といった問題が起こります。

この場合は、最高裁判決により、共用部分とされるため、取替えの費用負担は管理組合側になるということです。

これは、マンション標準管理規約だけでは対応し難い部分(専有部分か?共用部分か?費用負担は?)もあるということではないでしょうか。

そこで、
各マンションの状況に合わせて、規約等で具体的に専有部分と共用部分の違い(区分)を定めて、権利関係や維持管理について周知しなければなりません。

しなければならないが、この明確な区分を管理組合だけで行うことは難しいとも思いますし、それには、熟知した専門家の意見を聞くことが必要でしょう。

当然ながら委託する管理会社は熟知しているはずでしょうから(そもそも問題があれば、すでに解決しているはずですが…)専門家といえます。

またそれ以外であれば、私どもマンション管理士が専門家であり、助言等詳しくお伝えできると思います。

以上、
3回に分けて共用部分と専有部分について解説しましたが、これをきっかけに改めてマンション内での専有部分と共用部分の違い、明確化について考えることになれば幸いです。