マンション裁判例と弁護士費用

管理組合が、滞納問題等の裁判を行なった場合に、弁護士費用を被告負担にできるのでしょうか?

裁判費用については、大抵の場合、管理組合の主張が認められると被告負担となって請求ができます。

弁護士費用はどうでしょうか。

弁護士費用については、着手金や成功報酬等は訴額内容により決定されるため、滞納問題の場合の滞納額、遅延損害金だけでなく、弁護士費用で過度に被告に負担をかけることとなり、訴額とは別と考えられています。

そこで、この件に関しては、平成25年の東京地裁の判決があります。

この判決では、必ずしも弁護士費用について被告側の負担ではないことを示し、たとえ、被告側が負担することになっても全額負担ではなく、裁判所が相当と認められる範囲で
被告が負担することになりました。

しかし、この弁護士費用についての裁判には、平成26年の東京高裁の控訴審により、管理規約上に明記した弁護士費用の被告負担についての定めは合理的なものとされ、制裁金として管理組合は、実際に要した弁護士費用の一切を被告負担とすることが認められました。

弁護士費用とマンション標準管理規約

国土交通省公表のマンション標準管理規約第60条2項には、

「 組合員が前項の期日までに納付すべき金額を納付しない場合には、管理組合は、その未払金額について、年利○%の遅延損害金と、違約金としての弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して、その組合員に対して請求することができる。」

とあります。

このように、管理規約上で弁護士費用を違約金として明確に定めれば、民法第420条3項により、違約金は、賠償額の予定と推定され、被告負担とすることが、有効となります。

しかしながら、高裁等の裁判例であり、最高裁判決での判例ではないため、必ずしも弁護士費用を全額負担とすることではありません。

先ほどの訴額となる金銭の回収等とは違い、弁護士費用は過度に被告の負担が重くなるため、合理性が裁判所より認められなければいけない事情もあることに注意が必要です。

弁護士費用の負担先は不法行為と債務不履行で違う!?

例えば、管理組合が違法建築物となるマンションを建てた売主に対し、訴える場合には、民法上の不法行為としての損害賠償請求が裁判上で争われるため、売主となる加害者が弁護士費用負担することが、認められることになります。

しかしながら、管理費等の滞納についての訴訟は、マンション内での義務の履行を求めた結果として、それを怠ったとして民法上の債務不履行となります。

この債務不履行の場合には、最高裁判例として、弁護士費用については結果、認められてはいません。