大規模修繕工事と材質の寿命

前回は、建物設備についての更新等の時期をお伝えしましたが、今回は外装等に使用される様々な材質の耐用年数について挙げてみます。

建物を長持ちさせるには、設備だけでなく構造上の対策も必要となります。

一般的な長期修繕計画では、足場を架設しての大規模な工事を約14,5年周期で行います。

この周期を目安にマンションの修繕が行われる以上を、多額の費用の掛かる足場架設時に、一斉に工事が行われるように計画して修繕するべきと思います。

例えば、外壁が吹き付け塗装の場合には、以下によって、使用する塗料により寿命が違います。

アクリル系(安いけど、耐候性が弱い)➡約5年
ウレタン系(耐候性、耐水性等に優れる面が紫外線に対してやや劣る)➡約8年
シリコン系(とても費用対効果がよいと人気)➡約13年
フッ素(優れているが高い)➡約18年

このように、塗料の材質によっても10年以上の差があります。

近年では光触媒塗料(雨水が自然と汚れを流れ落とす)といった高額であるが、耐用年数が高く、約20年保つとされた長寿命の塗料もありますが、管理組合の財政状況等、管理意識を考慮して、大規模修繕工事時期に合わせた適切な選択が必要とも思います。

劣化を防ぐため材質からみる主な修繕周期

構造上の劣化を防ぐため防水工事や安全上、意匠上と重要となる外壁工事にも、おおよその修繕時期があり、材質により耐用年数は変わります。

しかしながら、太陽の紫外線の影響や塩害等の環境状況により耐用年数に差が出るため、
修繕周期は目安とし、最終的な判断は劣化診断によることにはなりますので注意ください。

以下が、材質からみた場合の主な修繕周期(国土交通省長期修繕計画標準様式等を参考)

鉄部塗装…
材質も重要ですが、雨に当たるかどうかでも耐用年数に違いがあります。
・雨掛かり部分の塗替➡約4年
・非雨掛かり部分の塗替➡約6年

シーリング…
打替えの目安は約12年ですが、塗料の場合と同じように材質に差があります。

・アクリル系(主にコンクリート目地に使用)➡約5年
・ポリウレタン系(主にコンクリート目地に使用)➡約5~10年
・ポリサルファイド系(主にタイル目地に使用)➡約12年
・シリコン系(主にガラス類目に使用)➡約10年

防水…
主に屋上はウレタン防水、アスファルト防水、FRP防水、廊下は塩ビシート防水が使用されています。

・ウレタン防水➡約12年
・塩ビシート防水➡約13~17年
・FRP防水➡約10年
・アスファルト防水(押えコンクリート)➡約20~30年
・アスファルト防水(露出砂付き)➡約20年

以上が、使用される材質におけるおおよその耐用年数ですが、当然に大規模修繕工事では、既存のままの上に塗料やシーリングを増し打ちするだけでなく、既存撤去や構造の補修が行われますので、材質は参考程度と思いますが、このように使用される材質によっても耐用年数が違うことを知って頂ければ、いざ、大規模修繕工事時期となった場合の、具体的な不要不急の工事選別等の判断材料にもなると思います。