マンションを終の棲家と考える

平成28年以降のマンションストック総数は約620万戸以上となり、現在では重要な住戸形態となっています。

マンション総合調査では平成11年度以降自分たちの住む住戸を「終の棲家」と考える意識が非常に高く、将来的に住み替えを考えている居住者より永住意識をもつ居住者の方が多いことが、調査より分かりました。

このような考えは今後も増え続け、マンションはスクラップビルドの考えからストックする考え方の時代になりつつあります。

そこで、マンションを「終の棲家」として住み続けるには、マンションの日常の維持管理、グレードアップが大きなテーマとなります。
その中で重要なのが数十年間隔で行われる大規模修繕工事です。

大規模修繕工事は外壁補修、防水工事、シーリング工事等の構造修繕や給排水管の更生、更新工事等の設備修繕を計画的に行います。
管理組合は工事時期までには資金がショートしないよう修繕積立金を蓄えて、無理のない計画(長期修繕計画)を立てなければなりません。

大規模修繕工事の主な工事項目

大規模修繕工事には一般的な工事項目があり、各修繕工事箇所にはおおよその目安となる修繕時期があります。
修繕時期には実際に建物診断・調査等を行い、工事実施時期を見定めて数十年に一度マンションに足場を仮設して工事を一斉に行います。

以下は主な工事項目です。

・仮設工事…共通仮設と直接仮設があります。

共通仮設は仮設事務所、作業員詰所、仮設資材置場、道路使用等各種申請等が項目としてあげられます。直接工事とは関係が薄く思われやすいですが、工事には必ず必要ですし、なくてはならないものです。

直接仮設は主に工事中のマンションの四周に設けられる外部足場です。工事見積費用の割合を多くを占めます。足場には枠組足場、単管ブラケットやゴンドラを用いた方法があります。

・防水工事

防水工事の防水とはコンクリート、モルタル等でできた屋根、床、階段からの屋内等への雨水の漏水を防ぐための層を設ける工事です。大規模修繕工事では既存の防水層を撤去新設、かぶせ工法により行います。防水工事にはアスファルト防水、長尺塩化ビニルシート防水、ウレタン塗膜防水が主な工事内容となります。

・外壁塗装、外壁タイル補修工事

外壁の補修工事は足場がなければ施工はできません。次のシーリング工事と同様に大規模修繕工事のメインの工事となります。外壁コンクリート、モルタルのひび割れ、爆裂等やタイルのひび割れ、欠損等の補修が行われます。わずかなひび割れの存在でも雨水が毛細管現象により奥まで簡単に侵入していきます。雨水の侵入はコンクリート奥の鉄筋を錆らせ構造耐力の減少、劣化を早めます。しっかりと下地を補修し、健全な状態に戻すことがこの工事の内容となります。

・シーリング工事

シーリングは建物の部材同士(ガラスサッシ回り等)や継ぎ目に充填される防水工事の一部です。サッシ回りで金属の間に使用される変性シリコンや非塗装用のポリサルファイドや塗装用ポリウレタンが使用される工事です。耐用年数が過ぎて劣化が進むとシーリングのひび割れ、破断が起こり漏水被害が発生します。工事内容は既存シーリングを完全に撤去し、打替えて目地を形成します。

・鉄部塗装工事

鉄骨階段、手すり、ガラリ、鉄扉等塗替えを行います。耐用年数を過ぎると既存の塗装部分が劣化、粉化し白亜化(チョーキング)を起こします。通常は既存の塗膜の劣化部分をケレン、下地を調整、錆止めをして塗り変えます。雨掛かり部分は塗装の劣化が早く4年ほどで修繕が必要となります。

・その他の工事項目

その他の主な工事項目としては外構工事である塀、フェンスの改修、車路の塗装、側溝や排水溝の改修や築2,30年を過ぎると給排水管の更生、更新工事、各設備の新設工事が必要となります。

このように大規模修繕工事の工事項目の内容は、とても専門的知識が必要で簡単には行きません。その場合は専門家の知識を借りる等して適正、的確に進めることを望みます。また、貴マンションの管理会社工事担当者がいるならば、しっかりと説明を受け、確認、透明性を持って進めると良いでしょう。