調査診断は予備調査や非破壊、破壊試験がある。
劣化状態把握のためにまずは予備調査

大規模修繕工事を行うには、まず基本計画の作成の検討をします。
その際に実施するのが建物の現状の劣化状態を把握するための調査・診断です。

一般的に調査・診断には、最初に予備調査として目視点検、居住者からのアンケートにより現状を把握して、また建物の懸念事項として考えられる部位を保管されている過去の修繕履歴情報をもとに調査したりします。

この予備調査は大規模修繕工事を具体的に行うための最初の段階であり、その後には専門家による軽微な機器を用いた簡易診断(1次診断)だけでなく、非破壊試験の2次診断、破壊試験3次診断といったより細かい調査を行いながら工事の検討を進めることもあります。

12~15年間隔で足場を架設して実施する貴重な工事となります。
建物に使用されている各部位の材料には、それぞれに耐用年数がありますが、周辺環境等の条件により劣化、損耗の進行速度が各部位で様々です。

軽微な劣化状態でも、放置していると数年後には建物の寿命を短くしてしまう危険性も考えられますので、この貴重な大規模修繕工事の際にはその辺りのことも考慮して具体的な工事内容を進めなければなりません。

具体的な非破壊試験の2次診断・破壊試験の3次診断

大規模修繕工事の具体的検討が進むと非破壊試験となる2次診断や破壊試験の3次診断の検討も考えられます。

建物の躯体や形状には変化を与えず劣化具合や健全性を調べる非破壊試験、逆に躯体、部材を抜き取ったり、引っ張りながらデータを収集する破壊試験があります。

この2次診断、3次診断となる本調査には専門家との協力が必然となり、基本的には費用がかかりますので経済性を考慮しなければなりません。
今、本当に必要な工事は何なのか、また、不要不急な工事はないのか、建物の維持管理や向上に向けての念入りな打合せが必要となります。

ですからその場合には、信頼のできる専門家、専門業者との打ち合わせが必要となります。

主な非破壊試験と破壊試験

・鉄筋コンクリートは環境状況などにより、次第にコンクリートが中性化して鉄筋腐食の原因や強度劣化が進みます。
非破壊試験には…コンクリート強度を計るシュミットハンマー試験。
破壊試験には…中性化や強度を計るために実際にコア抜きをして行うコア抜き試験ではフェノールフタレイン溶液による中性化試験があります。

・タイルは劣化をするとモルタルとの付着力が低下して剥落事故になりかねません。
非破壊試験には…欠損やひび割れ、水漏れ等がないかを確認する目視点検、外壁打診用ハンマーで実際に外壁を打診して打音により部位の浮きを確認する打撃診断、外壁の健常部と浮き部分の熱伝導の違いを利用した赤外線法
破壊試験には…外壁タイルや外壁モルタルを実際に引っ張り、破断したときの測定値を診断する引張試験

・シーリングや防水材は漏水事故を防ぐものです。紫外線やオゾン、雨水による酸、気温、日照などの影響を受けて劣化状況の進行状況に差があります。
非破壊試験には…過去の修繕履歴による診断や変形、ひび割れ、破断がないかの目視点検、試触をして材質が軟化、硬化といった変質状況も判断資料となります。
破壊試験には…現状の物を切断サンプリングをもとに試験場において引張強度、現状成分の状況等を試験します。