管理費を滞納した区分所有者が、未納のまま、専有部分を譲渡した場合、管理組合は、当然に旧区分所有者に対して支払いを請求できますし、特定承継人対しても行うことができます。
区分所有法第8条に、このように定められています。
「第8条、前条第1項(先取特権とされる区分所有者に対して有する債権)に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。」です。
特定承継人、それは売買、交換、贈与などにより承継する者をいいます。売買契約の買主はもちろんのこと、競売物件を競落した競落人も特定承継人となり、この者に対して、区分所有法に基づき未納分の管理費を請求することができます。
つまり、中古マンションの購入を検討される方は、この未納部分がないことを調査する必要があります。
売買にあたっての買主に説明される重要事項説明には、滞納の有無は必ず報告されることになっていますし、重要事項説明書として書面により交付されることになります。
説明を受け、購入を検討する際には、滞納分を控除するような売主による滞納分の支払いを求める条件にしなければいけません。
また、反対に管理組合としては、先取特権とされる管理費等の滞納分を他の一般債権より優越して、債権の請求ができることになりますので回収にあたっては、この条文はとても重要といえます。
先取特権とは、「民法第303条(先取特権の内容)先取特権者は、この法律その他の法律の規定に従い、その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。」と定められています。
つまり、簡単に言うと払ってもらうべきものを法律によって、支払い順位が優先されるということで、債務者の限られた財産から最初の方に頂くということになります。
この管理費についての債権は、民法上の共益の費用として一般先取特権となっています。
「民法第306条(一般の先取特権)次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。1、共益の費用2、雇用3、葬式の費用4、日用品の供給」です。
民法では、一般先取特権と特別先取特権とが競合した場合には、特別先取特権が優先することになっていますが、
この共益の費用の一般先取特権は、特別先取特権に優先する効力を有することになっています。
しかしながら、先取特権を実行しても公租公課(租税)や登記済みの抵当権の債権には劣後し、優先順位が後になります。
また、民事執行法上には、無剰余取消ということがあり、上記の配当劣後により管理組合が配当を受けられない場合には、申し立てた競売が取消となることにもなります。
ただし、区分所有法第59条の競売の実質運営上、無剰余取消がなされることなく、競売を実施でき新たな区分所有者からの滞納金の回収と行った可能性もあります。