マンションを維持管理する上で、管理組合は、管理費等の徴収を行います。
これら区分所有者から徴収される費用は、区分所有法第7条により、債務者の区分所有権及び動産の上に先取特権を有します。
(先取特権…債務者の財産について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利)
そして、「共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権」「約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権」は、債務者たる区分所有者の包括承継人だけでなく、特定承継人に対しても請求できるとされる債権となります。
(包括承継人…相続により被相続人(親)の権利義務を承継する相続人(子)等のこと)
(特定承継人…売買、交換、贈与などにより、他人の権利義務を個別的に取得すること)
では、上記にあたるマンション管理を行う上で徴収される費用にはどのようなものがあるのでしょうか?
・管理費,修繕積立金
・駐車場使用料
・専用庭,ルーフバルコニー等の専用使用権の使用料
・専有部分の水道,電気等の使用料
などがあります。
上記すべてについて特定承継人に対する債権を請求できるのでしょうか?
過去の裁判例、判例では、特定承継人に対して債権が承継される考え方には
慎重な対応が必要とされています。
管理費等に対する特定承継人の立場
管理費等の時効は5年、確定判決の時からは10年とされますが、この時効までの期間の間に特定承継人が現れた場合、その中でも確定判決があった裁判後の場合には、その後の10年の時効について本来の時効である5年を時効として特定承継人は主張できず、前区分所有者の滞納分の支払い義務を、本来の滞納者と同様に10年経過する前に現れた特定承継人も負うこととなります。
そして、支払い後は、本来の滞納者へ求償(立替え分を返済)をすることになります。
中間取得者は特定承継人!?
区分所有法第8条による特定承継人の責任は、中間取得者にも同様の責任があるのでしょうか?
(中間取得者…売買、競売の後に区分所有権を取得した後に、さらに売却等をした前区分所有者)
この件に関しては、大阪地裁平成21年7月24日の裁判例によれば、中間取得者も特定承継人にあたるとされています。
つまりは区分所有法第7、8条により、管理費等の滞納分について特定承継人には、債務を履行する義務を負うことになるのは確かでしょう。
しかし、管理組合が一括して水道光熱費等を支払う一括検針一括徴収方式を採用している場合に、管理組合から区分所有者に対して徴収するその使用料は、特定承継人が、その義務を負う責任はないとする考えもあります。
それが、名古屋高裁平成25年2月22日の裁判例です。