滞納額が増えれば増えるほど回収困難な状況

滞納問題の解決には原因理由に合わせた対応を

管理費、修繕積立金の滞納は区分所有者間に不公平感を生じさせます。

それぞれの区分所有者は負担割合に応じて共用部分を維持管理して住みよい快適な住環境にするために寄与しなければなりません。

この義務を履行しないことは区分所有者の共同の利益に反する行為となり将来の資産価値の減少となります。

そうならないように滞納問題には常に危機意識をもって早急な対応が必要です。

しかし、滞納原因には様々な理由があり、解決にあたっては慎重な調査、対応が必要です。

滞納理由が失業、病気による経済的な問題、失念による一時的な滞納、管理に対する不満や意図的な支払い拒否と様々な理由があります。

当然に経済的理由による滞納には精神的な追い込みは逆効果ですし、意図的な支払い拒否となれば断固とした対応が必要です。

解決には管理業者との委託管理であれば経験が豊富でしょうから連携して行いましょう。

ただし、管理業者との管理委託契約の範囲内での回収方法には法的手続きは含まれておらず、別契約となることが大半です。

自主管理での管理組合では専門家の意見を聞くなどし、慎重な計画のもとに解決を目指しましょう。

管理費は5年で消滅時効、時効を中断するには

最高裁の判決によると管理費等の債権の消滅時効は5年です。

時効により債権が消滅するには滞納者からの時効の主張や対応の援用がなければ、時効は完成されず、管理組合は支払いを求めることができますが、問題を長く放置せずにしっかりと支払いの意思を確認して早めに回収を行いましょう。

時効にならず消滅時効を中断するには、裁判上の請求(和解、調停、支払い督促、訴訟)と債務者の財産に対する差押え、仮差押え、仮処分と債務の承認です。

時効完成後、滞納者の時効援用がなければ、支払いの猶予の申し入れ、少額でも返済があれば債務の承認となり時効は中断します。

管理規約・使用細則に対処措置を明示して解決に向け粛々と行う

滞納問題をスムーズに解決するには予防的な意味合いを含めて管理規約等に遅延損害金の明示したり、対処措置の明示をすることがよいでしょう。

対処措置には法的対応の前段階の電話、訪問、文書による督促(意図的な支払拒否には内容証明郵便)を行い、改善が見られなければ調停、訴訟、書類審査のみで滞納者の異議がなければ強制執行のできる支払督促や区分所有権に抵当権がない場合には管理費などの共益費による先取特権での強制執行があります。

区分所有法59条…競売請求

滞納問題の解決には滞納者の区分所有権を他の者へ承継させることが考えられます。

滞納者が破産による場合は競売代金から回収ができる可能性がありますし、区分所有法8条によって新たに区分所有者となった特定承継人に対しても管理費などの債権の回収を求めることができます。

また、区分所有法59条にある競売請求を求めて解決をすることが考えられます。

区分所有法59条による競売請求による解決については厳格な要件が必要であり、滞納事案の内容により裁判所が慎重に判断して競売請求を認めます。

その要件には区分所有者が建物の保存に有害な行為その他建物の管理または使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をした場合またはその行為をするおそれがある場合で当該行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しいこと、さらに他の方法によってその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持がを図ることが困難であることが要件となります。

滞納問題が共同の利益に反する行為として裁判所が認めても、他の手段での解決、つまりは滞納者の残高がなくとも分割弁済の和解が有効な他の手段であれば裁判所は競売請求を認めない可能性があります。

このように法的処置を前提としての解決には専門性が非常に高く、弁護士や専門家であるマンション管理士に意見を聞くことが必要でしょう。